関西人間図鑑  【第28回  

 >4
 

姉御肌で今日もいく
「『何事も一番やなかったら意味がない』が、祖母の口癖で。だから、世界一の人工ボディを目指すのが夢やった。でも、心の傷を抱えた人たちと接するうちに、彼らにとっての世界一を目指すことが私の使命やと気がついたんです。カウンセリング重視で、その人にピッタリ合ったものを手がけることに力を注いでいます」  
 それだけじゃない。12年前から、指を詰めた暴力団離脱者のために300本以上もの義指を作り続けている。
「ワケありの怖いお兄さんが、指がないから就職できへんって飛び込んで来て。そら仕方ないと指を作ったのにまたトンヅラ。『どうしてお金を払わないの?!』って電話で怒ったことがきっかけで離脱者の現状を知ってね」  
 その後、離脱者を社会に返す為に安価で義指を提供する事を決意。警察へ「社会復帰を手伝うから私を護衛して欲しい」と直談判した。10年後、大阪府暴追センターから功労賞を授与される。気風のよさと度胸、そんな姉御肌が買われたのかもしれない。
「人工ボディを知ってもらい、人生の再出発を手助けできたらと思います。では、すみません。ペルーから来てはるお客さんが待ってるんで!」 白衣を翻して、小さな体は颯爽と部屋を飛び出して行った。
■06年2月15日掲載。データなどは掲載当時のものです。


 


≪分類≫
姉御肌目 
人工ボディ技師科

≪生息地≫
大阪市住吉区

≪年齢≫
34歳


≪分布≫
工房アルテ内

≪活動時間≫
週3回は9時過ぎまで工房
その後はママ業

≪好物≫
布団(寝るの大好き!)
最近は愛娘と石集め

≪相棒≫
愛娘の七海ちゃん

≪天敵≫
好きなものも嫌いなものも人間

 
取材・文/松原 宏子  撮影/小島 義秀