関西人間図鑑  【第28回  

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ナゾの工房
 大阪天満宮の目の前にある小さな工房。3階のとある一室に、今にも動き出しそうな人差し指や、遠目からでも弾力が感じられる乳房の一片、切断面を残した生々しい足首などが棚に無造作に並んでいる。楕円形の頬の肉片に埋め込まれ、濃い眉を持つ眼球にいたっては、こちらをジッと見据えているようでドキッとさせられる。   隣室では、白衣姿の女性が真剣な眼差しでなにやら作業をしていた。よく見ると、キラリと光る鋭角なヘラを使って、切断された手首を刻んでいる。
「ごめんな、散らかってて!」
 クルリと振り返ると、愛嬌いっぱいの笑顔をこちらへ向けた。156pの小柄な体格と相俟って、不思議な安心感がある。  
 人体のパーツが陳列する不気味な部屋とのミスマッチは広がるばかりだ。ここはいったい……。


 


≪分類≫
姉御肌目 
人工ボディ技師科

≪生息地≫
大阪市住吉区

≪年齢≫
34歳


≪分布≫
工房アルテ内

≪活動時間≫
週3回は9時過ぎまで工房
その後はママ業

≪好物≫
布団(寝るの大好き!)
最近は愛娘と石集め

≪相棒≫
愛娘の七海ちゃん

≪天敵≫
好きなものも嫌いなものも人間

 
取材・文/松原 宏子  撮影/小島 義秀