関西人間図鑑  【第6回  

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大きくなったら、上流へ天狗を探しに行く

 水生昆虫の多数を占めるカゲロウをラテン語で「エヘメロス」という。“ただ一日の命”という意味だ。短命で知られる生物を、半世紀もの長い歳月をかけて解明してきた。
「子どものときは褌1枚で家を出て、川に飛び込んでました」
 清潔感のあるシャツを着た、背筋がピンと伸びた大正生まれの紳士は、今も吉野川沿いの旧家に住んでいる。顔の半分を覆うべっ甲の広いレンズの眼鏡が印象的だ。
「大きくなったら、上流の大台ケ原に天狗を探しに行くねん」
 台風のあと、上流から大木が流れてくる。それを天狗のせいだと信じていた少年は、大人になるとカゲロウを探し求めて上流をのぼった。


 


≪分類≫
奈良産業大学 名誉教授目
理学博士科

≪生息地≫
奈良県五條市

≪年齢≫
78歳


≪分布≫
吉野川

≪活動時間≫
5時〜24時

≪好物≫
釣り

≪相棒≫
カゲロウ

≪天敵≫
おべっか

 
取材・文/北村 守康