関西人間図鑑  【第8回  

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大阪へ行けば、なにかチャンスはあるはず
「芸ごと好きのサラリーマンの家庭」に育ったせいか、子どものころから人前で歌うのが大好き。機会あれば歌っていた。周囲は暖かく見守ってくれていたようだ。「なにか歌って」と授業が終わるとリクエストする小学校の担任の先生。拍手で応えるクラスメート。縄跳びの柄をマイクの代わりにして、当時アイドルだった桜田淳子やキャンディーズの歌を披露したという。音楽によって自分が作り上げる空間を、人も楽しんでくれる。すでにそのことに喜びを感じていたのかもしれない。中学の文化祭のステージに立ち、アカペラで歌って喝采を浴びたこともある。高校生になったのとき、スター誕生のオーディションを受けたが不合格だった。
「大阪へ行けば、なにかチャンスはある」
 高校卒業後、化粧品会社の美容部員として働くため大阪で就職。その予感は当たっていた。
チンドンは、人と触れ合わないとはじまらない

 大阪では仕事の合間をぬって、バンドなどで音楽活動を続ける。人脈を広げ、交流を続けるうちに「ちんどん屋」に出会った。歌と楽器とパフォーマンスが合致した総合的な芸術。
「これだ、と思いました」  
 独立したばかりだった林幸治郎氏の『ちんどん通信社』の門を叩く。
「いきなりでしたけどね。受け入れていただきました。入ってみると、みんなはるかに年上の人ばかり」 「ほんまに続くんかいな?」
 周囲の人々はそれでも親切に教えてくれた。 「最初は先輩のあとをついてビラを撒いて歩いて……」
 演奏の合間のしゃべり方、身のこなし、一通り覚えるのに3年、さらに精進して10年近くで一人前という世界だった。


 


≪分類≫
ちんどん座長目 
アコーディオン科

≪生息地≫
宮崎県延岡市

≪年齢≫
企業秘密


≪分布≫
大阪・なんばから世界へ

≪活動時間≫
24時間

≪好物≫
焼酎(最近、味に目覚めた)

≪相棒≫
アコーディオン
ちんどん太鼓

≪天敵≫
大阪弁(しゃべれないので)

 
取材・文/藤岡アーヤ