関西人間図鑑  【第7回  

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1匹でもたくさんの子たちを救うために
「少しでも多くの動物たちを助けたい」
 そのためには常勤スタッフやスポンサーの存在が必要不可欠だ。オリバーさんは1990年、友人たちやボランティアの人たちに呼びかけてARKを設立した。 
 保護した動物たちは生活環境や虐待の酷さによって、皮膚病になったり、目が見えなくなっていたりなど、大きな障害を負っている場合も多い。里親に出すのが難しいためARKでずっと暮らしていく動物もいれば、なかには安楽死を余儀なくされる動物もいる。この決断を下すとき、それが彼女にとっていちばんつらくて悔しいときだ。
「人の命もこの子たちの命も同じだと飼い主たちが思っていたら、こんなことにはならないでしょう」
 きっとオリバーさんは傷ついた動物たちを抱きしめて、何度も涙を流してきたのだろう。
ここにいる時間は、できるだけ短いほうがいい

「穏やかな性格の子でしたよ。事務所をいつもウロウロしててね」
 取材の前日に、1匹の犬が新しい"親"に引き取られていった。  
 ARKの動物たちは、厳しい審査をクリアした里親のもとへ送り出されていく。細かい事前調査があり、家族全員でARKに訪れ、オリバーさんや動物たちと面会する。
「けれど、20%くらいの人は、ただほしいというだけで希望します。そういう場合は、お断りします。それと、里親になってもらう人にも、どの子がいいかを選ばせません」
 ARKが里親と子どもの相性を考えて選ぶ。これは虐待や途中放棄を避け、この子たちに幸せに生きてもらうために必要な手続きだという。
 どの子もかわいい。どの子も同じ命。
「そんな子たちが出ていくときは、うれしい。でもさびしいねぇ」
 まるで娘を嫁に出す母の気分なのかもしれない。
「でもね、ときどき里帰りで遊びにくるんです」
 オリバーさんは、目を細めて微笑んだ。


 


≪分類≫
ARK代表目 
マザー科

≪生息地≫
大阪府豊能郡能勢町

≪年齢≫
62歳


≪分布≫
全国各地

≪活動時間≫
24時間

≪好物≫
旅行・クロスワードパズル

≪相棒≫
動物たち

≪天敵≫
心ない飼い主

 
取材・文/チノナツコ