関西人間図鑑 【第23回】
| 愛がみあたらない |
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| 大学では法学部に在籍、弁護士を目指していた。弁護士になることを切望されていたからだ。
「弁護士だった祖父が、事務所をボクに継がせたがっていたんですわ。明治生まれの鉄の精神を持った祖父に、『歌舞音曲は禁止だ！』なんて言われてね。でも、１回生の途中で挫折」 理由は、六法全書の中に“愛”という言葉が出てこないから。愛と情熱のオトコなのだ。 ちょうどその頃、知り合いに頼まれてピアノ・バーで弾き語りのアルバイトを始めた。時はまさしく、バブルの絶頂期。大学生でも、一晩で１万円の稼ぎが入ることは珍しくなかった。それ以上にすごかったのがチップだ。 「リクエストされた曲を覚えていて、次にその人が来店されたらさり気なく弾くんですよ。“この人、『コスモス』が好きだったな”なんてね」 バブルに踊らされることなくバイト代も含めてしっかり貯金し、ニューヨークへと旅立った。23歳のときである。 |
| 右の翼と左の翼 |
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| 「大恋愛をしてね……大失恋をしたんです。それで日本に自分の居場所がなくなっちゃって、遊学を思いついたわけですわ」 貯金を全部ドルに換金して、お金が底をつくまでニューヨークで遊ぼうと決めた。 「アッパーイーストの高級マンションに住んで派手に遊んでましたから、２年ほどで帰ってきました（笑）。ニューヨークでの収穫？ それは、“自分は日本人なんだ”と気づかされたことですね」 ある日、友だちに誘われて行ったパーティで、質問責めにされた。 「Ｈｅｙ，Ｈｉｒｏｙｕｋｉ，なぜ千利休は切腹した？」「Ｈｅｙ，Ｈｉｒｏｙｕｋｉ，キミは古今和歌集派？ それとも新古今和歌集派？」Ｈｉｒｏｙｕｋｉは「Ｗｅｌｌ〜」を連発するしかなかった。 「日本人として背負わなきゃいけない文化。内なるものと外への憧景。ふたつの翼を持たないと飛べないんですよね」 |
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取材・文／中村
神無