関西人間図鑑  【第15回  

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関西生まれのトトロ
「狭いところですいません。あ、お姉さんこの座布団使ってください。体冷やすのはあかんからねぇ。このドア見てください、孫が破ってしまって閉めても寒いままなんですわ、この状態でまた孫は遊ぶんですけどね、アハハハ!」と、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
「そうなんですか」と、頷く時間もくれない。元気、元気、元気一色。アクションも大きければ笑い方も豪快。CMからそのまま抜け出したような“大阪のおばちゃん”だ。
「こういう仕事をしていると、生活にハリが出るんですわ。張り合いがあるって言うんですかね、もう楽しくて楽しくて」
 目を細めて、またアハハと口を大きく開けて笑った。豪快だけど愛嬌がある。なんだか可愛らしい。まるで関西生まれのトトロみたいだ。
今日は今日、明日は明日
「子ども時代はね。頭が特別良いというわけでも、運動がすば抜けてできるというわけでもなくてね」
 代々続くみかん農家の一人娘で、それは大事に育てられたイト子少女。それゆえに「将来は家を継いでや」という言葉を親からいつも聞かされていた。
「おとなしくて、ホンマに印象の薄い子やったと思いますよ」
 転機は高校時代。街の私立女子校で友達の影響を受けた。学校帰りの寄り道ですら許可が必要だったが、校則を破って男子校へ出かけたり、飲み食いしたり。思春期真っ只中、都会で自由に生きる人たちを見て、その生き方に憧れた。
「日々楽しければそれでええやんか。いずれは家を継がなあかんねんから。今のうちや」
 明日のことは明日考えよう。そんな考えが「おばちゃんパワー」の原動力になったのかもしれない。


 


≪分類≫
女優目 
漫才師科

≪生息地≫
岸和田市

≪年齢≫
56歳


≪分布≫
スーパーマーケット

≪活動時間≫
13時〜18時

≪好物≫
みかん お餅

≪相棒≫
携帯電話

≪天敵≫
水泳

 
取材・文/曽我部 美香