Since 【第26回  

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3 クリエイターのコンサルティング
 ある日、デザインを担当していた美容機器メーカーの社長から一風変わった依頼を受けた。
「なにかおもしろいことがあったら提案してほしい」。
  通常、デザイン会社は依頼主から「こういう物を作りたい」というオファーを受け、それをカタチにしていく。ところが、提案そのものをデザイナーに任せてくれるという。定期的に依頼主にヒアリングし、気づいたことがあれば新しい企画を提案したうえでプレゼンテーションする。もはやデザイナーの域を超えたコンサルタントの仕事でもあった。
「従来のように『とにかくかっこいいモノを』というデザイナーの視点だけでは対応できない。だから必死で勉強しましたよ。多いときは、1日3冊のペースでマーケティングや心理学の本を読み漁りました。美容やファッションなど、依頼主のターゲットはほとんどが女性。女性誌などで若い女性の市場を徹底的にリサーチしましたね」
  時代に何が要求されているのか、何が売れるのか。年配の経営陣の多くは、新しい情報を欲しがっている。
「新しい情報やアイデアは、意外なほど喜ばれ、受け入れられるん です。たとえば絵本のようなカタログ、家具調の美容機器。制作だけを請け負うのではなく、その上にあるコンセプトそのものに携われることの意味は大きい。こんなやり方もあったんだと気づきました」
 戦略性とデザイン性を兼ね備えた商品やイメージを提案できることが、ドライブの強みになっていった。
4 女性市場のブランディング
 法人相手の仕事を見通して、2004年に有限会社ドライブを設立。 現在は、ブライダル会社やリゾート会社など4社のコンサルティングからデザインまでを手がけている。
「自称は、“女性市場のブランディングができる会社”。企業が資本を投下し、とにかく豪華な見栄えでユーザーの心をつかむのが従来のブランディングでした。そうではなく、顧客へのサービス精神、 幸せになれそうなイメージやアイデアを私たちが知覚的に表現する。 ただのかわいい柄でなく、意味の詰まった柄。そんな、コミュニケーションありきのブランディングを提案していきたいんです」  
 現在スタッフは4人だが、今後も事業を拡大させていくつもりだ。
「今後はクリエイター向け営業論e-learningなど、ネットを使っ たビジネスも展開していけたらと思っています。教師を続けていることもありますし、なにより、目からウロコの方法をもっと多くの人に教えてあげたいですね」
 いくつもの顔を持つ経営者は、これからも出会っていく。依頼主たちと、エンドユーザーたちと、生徒たちと。コミュニケーションを重ねてデザインし、呼応し、調和していくのだ。


 

≪KEY PERSON≫

芦谷 正人氏(40歳)

≪PROFILE≫

[出生・出身地]
1965年 大阪府堺市

[趣味・特技]
読書

[座右の銘] 
現実は、かつてはすべて想像の中にあった。


≪COMPANY DATA≫

●設立●
2003年6月

●事業内容●
グラフィックデザイン、Webデザイン、ショップイメージコンサルティング、マーケティング

●所在地●
大阪市北区南森町1-4-5アップドルク402


 
取材・文/岸良ゆか  写真/小島義秀