Since 【第25回  

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1 居酒屋の奥さんのひらめき
 2003年の夏。新世界の居酒屋『満津弥』(まつや)に、元エンジニアの常連客が水道管清掃用の研磨ブラシを持ってきた。ワイヤの先をぐるりと囲むようにブラシがついている。
「私、この店のマスターなんですが、飲食組合の役員もやってるから、売り先を紹介してくれると思ったみたいですわ。精肉店や菓子店やったら機械を洗浄するときに使うやろうと紹介したけど、結局はアカンかった」
 ある日、店のカウンターで客とあれこれ売り先を考えているうちに、奥さんの口から出たのが「これ、歯ブラシにしたらおもしろいんとちがう?」の一言だった。
「おもろい。やってみよ!」とその場にいた一同に乗せられ、元エンジニアがさっそく見本をつくることに。100円ショップで長短さまざまな歯ブラシを買い集め、柄のまわりに水道管清掃用ブラシをカットして巻きつけた。
「手首を返さなくても歯の裏まで磨けて使い心地がいい。周りの人の反応もいいし、商品にしたらメチャメチャ売れるんちゃうかと思ったんです」


 

≪KEY PERSON≫

松本 芳夫氏(56歳)

≪PROFILE≫

[出生・出身地]
1947年 大阪市

[趣味・特技]
電車の中で読書
(西村京太郎など。じっとしているのが苦手だから)

[座右の銘] 
ムダな努力とムダな我慢はしない


≪COMPANY DATA≫

●事業内容●
歯ブラシの製造・販売

●所在地●
大阪市浪速区日本橋4−1−19石井ビル2F


 
取材・文/細山田 章子  写真/小島義秀