Since 【第22回  

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2 瞬間の空しさ
 大学卒業後、北海道の花農家で農作業の経験を積み、故郷の福岡で花屋に就職。しかし、その数年で気づいたのは、花業界の先行きの暗さだった。母の日やイベントのときにしか花は売れない。
「それでも花で商売をしていきたかったんです。ずっと飾ってあった花がなくなった瞬間の空しさってわかりますか? やっぱり、花の力ってすごいと思うんですよ」
 大阪の海外花輸入卸売会社に転職してから、それは確信に変わった。
「毎日、海外から届く新鮮な花を見ると、見慣れているはずなのにすごいって歓声があがったり、僕も驚いていました」
 しかし、これだけ美しい花も店に並ぶころには残り少ない命になっている。
「花本来の美しさをそのまま、届けたい。そのためにはどうすればいいのか。もっとダイレクトな流通の仕方があるはずだ」
 確固たる使命を持っての独立だった。社長は門出の祝いに、紺色のワンボックスカーを譲ってくれた。それはそのまま『彩苑』の動く店舗となった。
3 ジレンマ
 まずは自分で選んだ花を顧客に定期的に届けるサービスを始めた。花の盛りを楽しんでもらい、枯れてしまうころには新しい花が届いている。理想的だと思った。実際、95%の顧客から満足しているという手紙を受け取った。
 しかし、そのアイデアは長く続かなかった。価格を安く設定しすぎたために、花の品質を維持することができなくなったのだ。特に夏にはどれだけ気をつけても暑さで鮮度が殺されてしまい、問題を克服するためには大掛かりな冷蔵車を購入しなければならない。そんな大金はとても用意できなかった。
「花の美しさを知ってもらいたいのに、品質はバラバラ、鮮度も悪い。こんな状態でお客様に渡すわけにはいかない。結局、半年しか続きませんでした」
 最高品質のものを、鮮度にこだわって届ける。だがコストはかけられない。そのジレンマから生まれたのが胡蝶蘭に特化した事業だった。


 

≪KEY PERSON≫

浮城 隆氏(39歳)

≪PROFILE≫

[出生・出身地]
1974年 福岡県北九州市

[趣味・特技]
息子と遊ぶこと

[座右の銘] 
たゆまざる変革


≪COMPANY DATA≫

●創業●
2004年3月

●設立●
2004年12月

●事業内容●
胡蝶蘭の販売・配達

●所在地●
大阪市淀川区東三国12‐24‐305

 
取材・文/國澤 汐  写真/小島義秀