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1 ドンキホーテの妄言
「社員たちは僕の思いつきに、“なに言い出すんや”ってバカにした目で訴える。僕はドン・キホーテなんですわ」と苦笑いする。20年前、冷凍ではない、フレッシュなイチゴを日本で初めて輸入したのが大和通商だった。4月にスイカが食べられるようにしたのもそうだ。春にしか食べられなかったイチゴを年中食べられるようにアメリカで栽培。北半球と南半球で季節が逆転していることに目を付けてニュージーランドではスイカの栽培を始めた。
 ショートケーキに年中イチゴが乗っているように、季節はずれの農作物がスーパーに並ぶ。今ではあたりまえの光景だが、それをやろうとしたとき、社員のだれもが「なに言い出すんや」と眉をひそめた。しかし、それはドン・キホーテの妄言ではなかった。


 
≪KEY PERSON≫

立田 慶三氏 (60歳)

≪PROFILE≫

1942年神戸市出身。
食品会社の青果営業を経験後、退職して2年間渡米。日本にはまだなかったファミリーレストランや、地平線まで続く広大な畑が印象に残ったという。1974年、会社の同僚と大和通商を設立。最初の2年は仕事がなく、港で荷役の仕事をしながら食いつないだ。

≪COMPANY DATA≫

●設立●
1974年4月

●事業内容●
農水産物の輸出入及び販売

●所在地●
神戸市兵庫区本町1-3-19



 
取材・文/細山田 章子  写真/滝沢 稔