Since 【第10回  

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4 あ・うんの呼吸
『インヘイル・エクスヘイル』という呪文のような言葉の意味を尋ねた。
「吸うたり、吐いたりということ、つまり“呼吸”ですわ。お客様と“あ・うん”の呼吸でやっていくような商売がしたいっちゅうことですな」
 テーラーからブティック、卸、そして2プライススーツへ。時代によって方法は変化してきたが、いつも願いは「お客様に満足してもらう仕組みをつくること」だった。それは、お客様の身体に触れるテーラーから出発したからこそ、出てきた発想かもしれない。ブティック経営に乗り出した83年、全日本紳士服技術コンクールで最高の栄誉である高松宮杯に輝いている。職人から経営者に転身しても、テーラーという仕事に変わらぬ情熱と誇りを持ちつづけてきた。その証拠に、仕事を始めたときから使っているイギリス製のメジャーは大切な宝物だ。
「僕は10年ごとに新しいことを始めてきた。2プライススーツもそろそろ10年。次はどうなるかな……」
 お客の息づかいに耳をすませながら、すでに新しいアイデアを思い描いている。
オンリーのツボ
自作ブランドのスーツを2プライスで販売。価格帯によって『インヘイル・エクスヘイル』と『ザ・スーパースーツストア』の2業態にわかれるが、いずれもイタリアのファッションセンスとアジアのハイレベルな縫製技術を融合させた質の高いスーツを提供している。
■03年11月1日掲載。データなどは掲載当時のものです。


 

≪KEY PERSON≫

中西 浩一氏(57歳)

≪COMPANY DATA≫

●設立●
1976年6月

●事業内容●
プライベートブランドの企画・製造・販売、紳士・婦人服、雑貨の販売

●所在地●
京都市下京区松原通烏丸西入ル



 
取材・文/細山田 章子  写真/滝沢 稔